百冊022:グーグルが描く未来
副題は、「二人の天才経営者は何を目指しているのか?」 原題は、「Inside Larry & Sergey’s Brain」
今までに3冊のグーグル本を取り上げてきましたが、私が一番読みたかったのはこの本です。なぜなら、ラリーとサーゲイの二人の創業者の考え方や指向性の一部を明らかにしてくれたからです。本の邦題を「グーグルが描く未来」にしたのはまずかった。グーグルの今後の具体的戦略が書いてあると思って、本を読んだ方には、期待はずれだろう。 日本語の副題が英語の原題より、この本の本質を捉えている。しかし、天才経営者というのは違うと思う。私だったら、この本のタイトルをこうするかな。
「二人の天才エンジニアは、何を目指しているのか?」
そして私が考えた答えは、
「世界を再編成すること。」
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リチャード L ブラント
武田ランダムハウスジャパン
2010-07-15
おすすめ平均:
グーグル本を読むならばこれだけでいいと思います。 未来に関しては・・・・ |
私がこの本を読んで新たに感じたことは、グーグルは今までのどの企業とも比較できない、異質だということ。
そして、彼ら二人が考えていることは、既得権益を排除して公正なルールを作る、これが根本にあると思った。
公正なルールとは、つまり何でもいいのだけれど、モノやコトを作り出す人に、作りだした価値に応じた対価が支払われる、というルールだ。そして作った人と買う人の間に仲介者はいらないし、仲介の対価は本当にかかったコストしか支払わず、システムで行う。人間が介在する必要がないから、当然コストはミニマム。
彼らは、自分で考え、自分で作る人を支援する。新しい価値を創造せずに、単なる仲介を生業とする仕事で、高収入を得ている人間から仕事を奪おうとしている。広告業、マスメディア(出版、TV、新聞など)、不動産業、金融業(銀行業、証券業、保険業など)
特に以下のような特徴がある業界、会社。
・ 価格設定がいいかげんな業界
・ 独占的で価格を支配している会社
当然のことながら、製造会社や外食産業のように、日々消費者からの厳しい目にさらされている企業は対象外だ。
私がこの本から抽出した、ラリーとサーゲイの指向性は以下のとおり。
①公正であること。
②目先の利益は追わないこと。
③ビジネスマンではないこと。
④良し悪しはユーザーが決めること。
⑤既得権者が創りだしたルールは、たとえ法律であっても従わない。
⑥クリエイターを育てるために、様々な支援をする。
彼らの今後の戦略を私なりに予測すると、
(1)適正な価格設定メカニズムの展開
検索広告において、
・Adwords、
・Adsense、
・顧客に無駄なコストを発生させないオークション価格自動設定アルゴリズム、
・利益を最大にする表示順位設定アルゴリズム 、
上記技術の提供により、顧客、運用者の両方を満足させる価格最適化の実現と
・Analytics
上記技術の提供により、顧客が広告効果の測定を可能とした。
このような価格最適化メカニズムは、価格設定に根拠がないものに対して、利益を最大化するために応用できる可能性がある。
書籍、雑誌、音楽、ソフトウェアなどのデジタルコンテンツには適用できるし、需要と供給の関係が明らかになれば、価格設定が公正になるものは、増加するだろう。まるで計画経済だ。
(2)出版がターゲット
仲介者のマージンを排除して、ユーザーと著者にとって最大の利益となるようなメカニズムを、出版の分野で確立することを狙っている。Androidは、携帯電話もターゲットにしているが、よくよく考えてみると、デジタルブックビューワーのプラットフォームにも向いているわけで、またクラウドとの相性もいいわけで、今頃気づく間抜けは私だけかもしれないが、アランケイが言い出したダイナブックの実現といってもいいでしょう。つまり、携帯電話は残るとして、音声以外のコミュニケーター、デジタルブックビューワー、オーサリングツールの機能を持ったタブレット型デバイスは、万能ツールです。ここで登場するAndroidタブレットは、Microsoft、Appleを脇役にするほどの力を秘めていると思います。このデバイスは、出版業界、コンピュータ業界を大きく変える力を秘めています。もちろん、Appleの方が先行はしていますが、数やクラウドでAndroidが抜き去る可能性は大きい。
ただし、気になるのは独占ということですね。2010年第2四半期も売上68億2000万ドル、純利益18億4000万ドルと好調です。確かに一企業による独占は、価格維持に使われて非常に心配ではあります。MicrosoftがWindowsXPの価格を発売から8年経過しても変えなかったのは、恐ろしいと思いますが、市場独占するとそういうものです。その懸念は、グーグルにもあるのでしょうか。今のところ、彼らは消費者からではなく、企業からお金を取っています。今後も、ネット広告だけでなく、TV広告、新聞広告、雑誌広告と手を伸ばしている限りは、消費者への影響はないともいえます。もちろん、同じ広告やインターネットのサービス企業にとっては、参入障壁となる重大な問題となりますが、世の中に悪い影響を与えるとは思えないのです。
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