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ソフトウェア技術者だった私が、会社の取締役がうろうろする部門へ異動し、ROE(Return on Equity)経営、IR(Investor Relations)などという言葉を毎日耳にするようになったのは、もう10年以上前のことです。そして親会社のCEOにIBM出身の人間が就任し、株価重視路線を走り、CEOはストックオプションを売りぬき、その後株価が暴落し、破綻しそうになりました。幸いにも親会社はそこから復活するのですが。。。

この本を読んでいて、「**株主偏重主義**」「**CEOゴロ**」が米国の企業をおかしくしてしまった例として、まず最初に親会社のことを思い出した。

21世紀の国富論
原 丈人
平凡社
2007-06-21
定価 ¥ 1,470
おすすめ平均:
勇気と希望
ベンチャーキャピタリストは必見
日本に本当に必要なこと
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この本の著者のスタンスに、私は共感を覚えます。私がブログで書いてきたことと重なります。とにかく、一度読むことをお勧めします。ただしこの本は、ほんの一部の優秀な人たちだけを対象に書いているように思います。つまり、一般の人には関係しようがない、雲の上の領域の話ではないかとも思うのです。

この本から私が抜き出したキーワードとは、「会社は誰のものか」「利ザヤ」「ハンズオン」「クリエイティビティ」「ユビキタス」。

「会社はだれのものか」 
株主のものか、従業員のものか、など議論するほどのものではなく、いろいろな側面があるとしかいいようがない。

「利ザヤ」
『金融とは利ザヤをとること』ならば、私的には存在価値ゼロと言いたい。何も生み出していないゼロサム社会。

「ハンズオン」
ベンチャーキャピタルにも2種類あるらしい。創業者と一緒に立ち上げるハンズオンとただ金を出すだけのハンズオフ。

「クリエイティビティ」
知的工業製品を作るためには、クリエイティビティが必要です。

「ユビキタス」
著者は、『ユビキタスをどこからでも使える』と説明し、『パーベイシブは、誰でも使える』として、パーベイシブ・ユビキタス・コンピューティング(PUC)という言い方をしています。ユビキタスという言葉には、あらゆる物にコンピュータが搭載され、お互いにネットワークでつながる、つまりコンピュータが偏在するという意味だけでなく、あらゆる物つまり人間が今まで親しんできた日常品の中にコンピュータが組み込まれ、コンピュータを意識することなく使える、という意味も含んでいます。そういう意味では、パーベイシブという言葉を改めて出すほどではないかもしれません。

著者は、資産の圧縮などの見かけの操作でROEを上げることには意味がなく、新しい基幹産業を作り出すために、クリエイティビティと情熱を持った人たちを集め、何年もかけてインキュベーションすることが重要だという。
そして、IT産業という一分野をとれば、その基幹産業はPUCが中心になると言っている。私なりの解釈では、PUCとは簡単に言えばiPodであり、NintendoDS、携帯電話でしょう。組み込み型のリアルタイムOSとセンサーやアウトプットデバイス(表示や音)そして無線LANを組み合わせた小さな専用携帯機器が今後さらに出現する、というのが私なりの想像です。それで思い出したのが、私が以前発案したSerendipity Badge。これはまさにPUCの産物になるでしょう。

2007年10月28日 | Posted in | | No Comments » 

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