本>ヒルズ 挑戦する都市
最近毎日お世話になっているアカデミーヒルズ。この場所を生み出した森ビルの社長が書いた、森ビル株式会社の都市再開発(赤坂アークヒルズ、六本木ヒルズ、上海環球金融中心)の歴史です。
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森ビル社長 森 稔
朝日新聞出版
2009-10-13
おすすめ平均:
都市作りの面白さを存分に味わえる 理想を実現化する生き方 「人間関係とは、不思議なもので絶対はない。」 |
六本木ヒルズに通うようになって、やはりここは他の場所と違うという意識が強まってきました。東京ミッドタウン、天王洲アイル、恵比寿ガーデン、丸の内などそれぞれ魅力的な街づくりをしているとは思いますが、六本木ヒルズが他と一線を画しているのは、「知識創造者・都市生活者」への配慮ではないかと思います。
一つの街を作り出すだけでも大変ですが、それを維持・活性化していくことはもっと困難です。困難というより、そこに集う人々が自然に作り上げていくものです。どういう人が集まってきて、どう盛り上げてくれるのか、ある程度は街の設計者の意図が働くとしても、そこに集う人々によって決まってきます。結局街の魅力は、そこに集う人々以外の何者でもありません。だから、どういう人たちを集めるべく、街を設計するかが大事です。そう考えると、他にない、六本木ヒルズを特徴づけるものとは、知識創造者をひきつけるアカデミーヒルズではないかと思います。
緑や職住近接、垂直都市などは、他の都市再開発でもあると思います。しかし、アカデミーヒルズのような場所は、他に探すことができません。
アカデミーヒルズというより、その一部である六本木ライブラリーが、私にとっては六本木ヒルズの要です。当初六本木ライブラリーは、単なる会員制図書館と思っていたのですが、実際にはモバイルワーカーの中継基地のようなところでした。
私が会員として登録したころは、会社員で土日に資格試験の勉強をする場という認識でした。だから、土日が混雑するのだと思っていました。ところが平日毎日くるようになってわかったのですが、レンタルオフィス代わりに、スモールビジネスをする人たちで溢れていました。おそらく、東京で、あるいは六本木界隈でしか成立しない、クリエイティブクラスかその卵の達が集う、極めて快適なワークスペースなのです。
私は、六本木ライブラリーは、月額9450円(3年ほど前に6300円から値上がりした)になった時、それだけのメリットはないから会員数は減るだろうと思ったのですが、現在感覚的なものですが増えているように感じます。これは、森ビルが行ってきた貸しビル業、貸しオフィス業から、ワークスペースを個人単位で売る、貸しワークスペース業です。これは、リソースの有効活用もできるので、森ビルにとっても面白いビジネスです。ただし、聞くところによると、六本木ライブラリーにするより、どこかの会社に貸した方が利益は大きいというような話は以前聞きました。しかし、会員数だけの問題ですから、既に損益分岐点は越えていると思いますが、いかがでしょうか。
本書を読んで、森ビルは地道に事業を積み上げてきた、と感じました。貸しビル業で日銭が入ってくるのが重要です。バブル期をどう乗り切ったのか本書では述べられていませんが、土地の売買が主体ではなく、土地の魅力を作り出す事業であったからと理解しています。
六本木ヒルズを作り上げた森ビルに感謝するとともに、今後もマイクロビジネス、知的労働をする者を支援する、六本木ライブラリー、アカデミーヒルズ、六本木ヒルズを発展させていただくことを切に願います。
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