2020年初夏版『自宅録画サーバー(全録)』の概要
2022年6月12日 新たな全録サーバーを作成しました。
地上波6チャンネルの番組を全部録画するサーバー、『自宅録画サーバー(全録)』を作りました。
1週間ほど問題なく動いているので、その概要を紹介します。
『自宅録画サーバー(全録)』とは
自宅録画サーバーを10年ほど利用しています。
今までは、地上波4チャンネル、BS4チャンネルを同時に録画が可能でしたが、TSファイルをmp4ファイルにトランスコード(圧縮)するために時間がかかり、1日50時間録画程度が限界だと思っていました。
もし、6チャンネルを全録すると、1日144時間の録画を24時間以内にトランスコードする必要があり、6倍速以上のトランスコード能力が必要でした。これは、CPUの能力から無理だと思っていました。
ところが、第8世代、第9世代Intel CoreのCPUでは、6倍速以上でトランスコードが可能となり、『自宅録画サーバー(全録)』を作成してみることにしました。
今までも、東芝REGZAでタイムシフトマシンを使ってきたので、地上波6チャンネルの全録がとても便利であることは実感していました。
ただし、タイムシフトマシンに不満な点もあります。
- 4TBのHDDを2台を使っても、8日間しか録画を保持できない。
(6チャンネルの録画に1日1TBが必要。TSをそのまま保存しているため。) - 主に番組表から検索する使い方しかできない。
(いろいろ便利な機能がありますが、リモコンで使うのは面倒です。)
そこで、もっと長い期間保存でき、キーワードで検索できるサーバー、『自宅全録サーバー』が欲しかった。
市販の全録レコーダーの状況(2020年7月9日現在)
REGZAのタイムシフトマシンは、テレビの便利機能として使っています。
しかし、世の中には「全録レコーダー」というジャンルもあり、現状ではパナソニックが精力的に製品を発表しています。
以前、モニターで使ったことがありますが、専用の圧縮チップを搭載し、安定した動作をしていました。
最新の全自動DIGA(全録対応モデル)は、2020年3月13日に発売された、以下の3機種があります。
型番 | DMR-4X1000 | DMR-4X600 | DMR-2X200 |
---|---|---|---|
価格 (2020年7月9日) | 269,800 | 150,730 | 62,000 |
発売日 | 2020/3/13 | 2020/3/13 | 2020/3/13 |
HDD容量 | 10TB | 6TB | 2TB |
録画時間目安 | 4K:390時間 ハイビジョン: 762時間(地デジ)/ 540時間(BSデジタル) | 4K:260時間 ハイビジョン: 508時間(地デジ)/ 360時間(BSデジタル) | ハイビジョン: 254時間(地デジ)/ 180時間(BSデジタル) |
チャンネル録画数 | 最大8チャンネル | 最大4チャンネル | 最大6チャンネル |
チャンネル録画日数 (15倍録モード) | 8ch✕28日間 | 4ch✕28日間 | 6ch✕16日間 |
最新機種では、4K録画にも対応しています。また、6チャンネル全録を16日間可能な機種が、6万円で買えてしまいます。
この全自動DIGAの機能で十分な方は、わざわざ『自宅録画サーバー(全録)』は必要ないと思います。
ハードウェア
2020年版自宅録画サーバーと、基本的には同じ構成です。
違いは、以下2点です。
- TVチューナーカードを2枚使用。
(地上波6チャネルを実現するため。) - 12センチ冷却ファンを1つ追加。
(CPU温度が80℃を超えることがあったため。)
No. | カテゴリ | 品名 | 個数 | メーカー | 税込価格 Amazon 2020年7月7日現在 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ケース | Carbide SPEC-04 Tempered Glass | 1 | CORSAIR | ¥10,756 |
2 | 電源 | KRPW-L5-400W/80+ | 1 | 玄人志向 | ¥3,311 |
3 | マザーボード | H370M-PLUS | 1 | ASUS | ¥12,790 |
4 | CPU | i5-9400 | 1 | intel | ¥19,980 |
5 | メモリ | DDR4 PC4-21300 4GB | 2 | CFD | ¥5,700 |
6 | チューナーカード | PX-W3PE4 PX-Q3PE4 | 1 1 | PLEX | ¥12,767 ¥22,690 |
7 | SSD(256GB) | TS256G SSD370 | 1 | Transcend | ¥11,000 |
8 | HDD(8TB) | ST8000DM004 | 2 | Seagate | ¥29,010 |
9 | カードリーダー | SCR3310/v2.0 | 1 | SCR | ¥1,880 |
10 | 冷却ファン | 120ミリ静音ファン | 1 | ELUTENG | ¥1,699 |
合計 | ¥131,583 |
13万はちょっと高いかもしれませんが、パナソニックの全自動DIGAと比較すると、コストパフォーマンスはDMR-4X600よりいくらか良いでしょう。
録画サーバー(全録)の全体写真です。
以下は、PCケース後方をアップした写真です。CPUファンの左側にシャーシーファンがあることが見えます。
CPU温度が全録時に80℃を超えてしまったため、後方にファンを追加しました。
これで、70℃まで落とすことができました。
以下は、PCケース前方をアップした写真です。
前面には、2つのファンがあり、HDDやSSDを冷却しています。
ソフトウェア
ソフトウェアは、2020年版自宅録画サーバーとほぼ同じ構成だが、いくつか変更があります。
- CentOSは8.1(1911)にアップデート
- ffmpeg 4.2.3が使用可能
- インストールはyumからdnfへ変更
No. | 項目 | 名前 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | OS、前準備 | CentOS、SELinuxの無効化 | 8.1(Gnome Desktop) |
2 | トランスコーダー | ffmpeg | 4.2.3 |
3 | カードリーダ | pcsc_scan | |
4 | 復号ライブラリ | ARIB | |
5 | チューナードライバ | 非公式ドライバ recpt1_px4 | |
6 | 録画ディスク設定 | ||
7 | 録画制御 | mirakurun | |
8 | 録画予約 | epgstation | ブラウザから利用 |
9 | サーバー状態監視 | munin | ブラウザから利用 |
10 | ファイルサービス | samba | Windowsから利用 |
11 | リモートデスクトップ | xrdp | Windowsから利用 |
12 | 録画視聴 | plex media server | ブラウザから利用 |
13 | システム管理 | cockpit | ブラウザから利用 |
また、EPGStationのトランスコード設定では、preset=superfast、crf=25とすることで、6チャンネル全録(7倍速、圧縮率25%)を安定稼働できました。
例えば、入力ファイルをsample.tsとし、出力ファイルをsample.mp4とすると以下のオプション設定で、地上波7倍速が可能です。
ffmpeg -y -i sample.ts -preset superfast -c:v libx264 -crf 25 -f mp4 -c:a aac -strict -2 -ar 48000 -ab 192k -ac 2 -loglevel error sample.mp4
地上波6チャンネルの全録設定は、EPGStationのルール設定を以下のようにします。
1週間で計1500番組を超える予約数になります。
稼働状況
3日間のトランスコード状況を集計した結果は、以下のとおりです。
日付 | 録画時間 | 圧縮時間 | 圧縮速度 | 録画サイズ | 圧縮サイズ | 圧縮率 | 番組数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
7月5日 | 505462 | 71461 | 7.07 | 1017532432152 | 268818164607 | 26.42% | 233 |
7月6日 | 498474 | 72174 | 6.91 | 998189627460 | 259466717907 | 25.99% | 169 |
7月7日 | 522873 | 73830 | 7.08 | 1036857162220 | 258310802125 | 24.91% | 160 |
1日の録画時間は、60秒✕60分✕24時間✕6チャンネル=518,400秒
1日の録画サイズは、7.2GB✕24時間✕6チャンネル=1,036.8GB
いくらか数値にぶれがありますが、日をまたいで放送される番組や、番組表が更新されず録画されなかった番組が原因でした。
稼働状況としては、安定して録画が行われており、圧縮速度7倍、圧縮率25%を達成しました。
1日の圧縮量 1TBのTSファイル ⇒ 250GBのmp4ファイル
8TBのHDDを2台搭載しているので、
録画可能日数 = 6チャンネル✕64日間(16TB/250GB)
温度管理
『自宅録画サーバー(全録)」のCPU稼働状況は、以下のとおりです。
6コア6スレッドなので、600%の内訳はおよそ以下のとおりです。
- 6チャンネル録画:40%
- ffmpegトランスコード: 360%(160%+200%)
- mirakurun動作:80%
時々mirakurunが録画以外で動いているのは、番組表の取得かもしれません。
現状は、以下のようになっています。
平均:350%(トランスコード時:400%、追加でmirakurun動作時:500%)
まだ、余裕を持って稼働している状態です。
CPU温度は、以下のとおりです。
平均 66.09℃(MAX 77.98℃、MIN 42.03℃)
室温が26~28℃の状態で上記の結果なので、あと10℃程度は余裕があるでしょう。
HDD温度は、以下のとおりです。
SSDは、平均49℃である。SSDの限界温度は60~70℃なので、10℃程度余裕があります。
HDDは、平均42℃である。HDDの限界温度は、50℃と言われているので、8℃程度の余裕があります。
この測定時、室温は26~28℃程度なので、室温が35℃くらいが限界かもしれません。
これらの情報を元に判断すると、おそらく通常の夏であれば、乗り切れる状態です。
室温が35℃になりそうな時は冷房を入れるように注意すれば、安全だと考えられます。
最初に『自宅全録サーバー』を立ち上げた時、CPU温度が80℃、HDD温度が45℃ありました。
そこで、後方に冷却ファンを1つ追加したことで、CPU温度で10℃、HDD温度で3℃下げることができました。
この対策が、稼働安定化に大きく寄与しています。
電気料金
やはり、電気料金が気になります。
そこで、『自宅録画サーバー(全録)』の1日の消費電力を測定した所、1.7kwhでした。
電気料金は、以下のとおりです。
消費電力(kwh) | 料金(120kwhまで) | 料金(120-300kwh) | 料金(300kwh以上) |
---|---|---|---|
単価 | 19.88円 | 26.48円 | 30.57円 |
1.7kwh | 33.8円 | 45.0円 | 52.0円 |
従量で単価が変わりますが、1kwh=26.48円とすると、
1か月の電気料金 = 1350円(45円✕30日)
いくらか高い気がします。もう少し画質を落として(crf=28)圧縮速度を8倍にすれば、安くなるかもしれません。
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