脳:クオリア降臨

クオリア降臨
茂木 健一郎
文藝春秋
2005-11-25
定価 ¥ 1,700
おすすめ平均:
無限に浮遊する感覚の文学論
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文学青年だったのでしょう
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毎週見ているNHK BS2日曜朝8時の「週刊ブックレビュー」で三舩優子さんが紹介していたので、読んでみました。4月9日この番組が放送された後に、三舩さんは茂木さんに会ったそうで、正にセレンディピティですね。読み始めた時、面白いなとは思ったのですが、これは文系と理系の境界領域なので、途中で投げ出す人が多いのではないか、三舩さん(ピアニストは文系なんでしょうね)がよくこの本を最後まで読めたなと疑問を抱きながら読み進めました。そして、中盤『「スカ」の現代をを抱きしめて』のあたりを読んだところで、この本の趣旨がようやく見え始めてからは、一気に最後まで読みことができました。


この本のテーマは、科学は普遍性を追求する、文学は一回性を追求する、そしてその双方が交錯する人間の脳と身体との関係に通じ、そこにクオリアが生ずる。
例えとして、こんな言い方ができるかもしれません。囲碁は非常にシンプルなルールしかありませんが、19×19の交点に交互に白石と黒石を置いていく時、その複雑さは膨大になります。もし、この囲碁の完全解を得る方法が発見されたら、プロの囲碁棋士はいらなくなるのでしょうか。チェスで世界チャンピョンがコンピュータに敗れた後、チェスはつまらなくなったでしょうか。私はそう思っていません。囲碁は、それぞれの対戦において、様々な状況が生じ、様々な決断を行います。その決断は一回性によって、とても興味深いものになる。よく小説はディテールに宿るというようなことが言われますが、囲碁でもその時々の文脈に味わいがあるから面白いのです。だから、神の視点から既に回答がわかっているとしても、人間同士の勝負には間違いがあったとしても詳細をみていけば味わい深い奥行きがあります。だから一回性というものが貴重に思えるのです。

しかし、茂木さんというのは理系と文系の狭間にいるとても面白い人だと思いました。NHKの「プロフェッショナル」という番組をかかさず見ていますが、あの柔らかでほんわかした雰囲気は独特のものです。この本のカバーにある写真がそれを的確に捉えていると思います。

2006年05月06日 | Posted in | | No Comments » 

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