百冊012:スティーブ・ジョブズ-偶像復活
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この本は、パーソナルコンピュータ業界の歴史を大枠で把握するためにも使える。今までにジョブズの本は何冊も読んできたが、インド放浪の旅の詳細などは私が知らなかった部分だし、アップル復帰後の最近のエピソードもあり、十分楽しめた。詳細に不満を持つ人がいるかも知れないが、大きな流れを知るのにお勧めだ。特に、PC業界におけるハード、ソフト、ネット、コンテンツという重点の移り変わりはそのままジョブズの歴史と重なっている。
ビジョナリーという言葉を私はジョブズを通して知った。つまり、ハードやソフトの技術者はビジョナリーのしもべであり、どんどん使い尽くされていくという考え方である。確かに、一度成功した技術者が2,3度と脚光を浴びることは少ない。ビジョナリーは自分が予見することを実現するために、常に新しい技術や技術者を探して取り上げる。日本の芸能人でも長く続けられる人というのは、企画だけ行い、そこに常に旬なネタ芸人をつれてくることで、自分の価値維持する連中がいる。(とんねるずとかダウンタウンとかだろうか)
そういう意味でビジョナリーというのを軽蔑する部分があったのだが、ジョブズやゲイツ(こちらはビジョナリーというよりアーキテクトかもしれない)が20年以上この世界で生き延びてくるとこういう人たちも評価せざるをえない。この本と次に紹介しようと考えている「レボリューション・イン・ザ・バレー」を読んで、ジョブズはこの業界を盛り上げてきた立役者で、彼なりに貢献してきたことはわかった。ただし、それを自分のものとして紹介するのはやめて欲しかった。ウォズであり、バレルであり、アンディ・ハーツフィルドでありビル・アトキンソンであり、彼らの業績をもっと称えるべきで、自分はプロデューサーという立場に徹したならば、もっと許せたと思う。
ジョブズそのものは、ハードの人であり、箱の人であったと思う。ソフトやコンテンツにはそれほど口を出さないことでもわかる。しかし、彼の管轄化でよいものができるのは、そのこだわりにあり、自分が納得できるものを作ろうとする姿勢にある。この点だけは、敬服に値すると思っている。
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