「論点思考」は重要
内田和成さんの「論点思考」を読みました。
この本で書かれていることは当たり前のことなのですが、これを理解していない人が多い。世の中には、この基本的な考え方を身につけていないために、本人だけでなく、周りも巻き込んで、時間を無駄にしているのです。
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内田 和成
東洋経済新報社
2010-01-29
おすすめ平均:
正しい問いに答えてなければ、仕事の意味はない! あなたは、正しい問いを解いているか? まず論点の設定が重要。 問題解決に最も求められる能力を教えてくれた |
要するに、社会が必要としている能力というのは、問題の解決ではなく、問題の発見だということ。
著者の内田和成さんを見たのは、BookTVというTV番組だった。本を書くきっかけが、ある専門分野の本を読んでいて、なぜこんなに難しく書くのだろうと不思議でしょうがなくて、自分が書けばもっとシンプルにわかりやすく書けると思ったからということだった。確かに、そのTV出演時も、質問に対する的確な答え方と無駄の無さは、相当なキレ者だと感じました。
本書そのものも薄くて、さらっと読めるし、エッセンスのような本です。しかし、おそらくここに書かれていることから論点思考が何かはわかっても、実践することが難しいと思います。かなりメタレベルの話ですから、これは暗黙知なんでしょう。
私が理解した範囲で重要だと思ったことは、二つ。
論点は、解決策が導きやすいように、ブレイクダウンしていく。(大論点、中論点、小論点)
論点は、固定したものではなく、どんどん時間の経過と共に優先順位が変わる。
一つの現象に対して、様々な視点から論点を抽出することが可能で、どの論点を優先するかが、問題設定者のセンスに依存しています。ある論点を切りだして、その解決策を考えるわけですが、その間にも状況は変化し、論点の優先順位は変わっていきます。その優先順位を加味しながらの問題解決は、相当なセンスと専門能力と機転を要します。
例えば、尖閣諸島の中国人船長逮捕の事件では、中国漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件と考えるのか、領土問題や領有権の侵害と考えるのかでも、解決策は変わってきます。まして、その後の学生も含む反日デモなどを見ていると、中国政府は国内の反日感情を抑えるために、日本に強硬な姿勢をとっていたとも読めます。そうであれば、日中の外交問題にしない方が正解かもしれません。相手の出方を含めて、論点を設定し解決策を模索する。外交問題は難しすぎます。
外交や政治ではわからない要素が多いので、論点思考の成果は見えにくいでしょうが、少なくともビジネスに関しては、論点思考の威力がはっきり見えると思います。
例えば、「電子書籍ビジネスを成功させる」という論点は、以下のように分解できるかもしれない。
①電子書籍ビューワーの性能に問題がある。(重さ、見やすさ、操作性)
②電子書籍ビューワーの価格に問題がある。(出荷台数、製造コスト、専用機vs汎用機)
③日本語フォーマットが統一されていない。(ビューワーソフトの互換性、縦書き、るび)
④著作権保護システムを採用するか。
⑤売上の分配方法が決まっていない。
⑥既存流通ルートとの折り合いがついていない。
⑦電子図書館の利用を制限するか。
⑧電子書籍作成のコスト削減ができるか。
⑨電子書籍流通の違法行為を取り締まれるか。(法整備)
上記のように大論点を中論点に分解し、さらに優先順位をつけて、解決策を検討し、進捗状況に応じて、優先順位を変える。こういく芸当ができる人は数少ないと思う。AmazonやAppleは、こういう論点から解決策を導くことを実際にやってのける力がある。残念ながら、日本企業でできるところはないかもしれないが、Sharpあたりががんばれるか?
だんだん話がそれてきたので、終にしますが、論点思考は重要だし、何より自分の頭で考える以外に方法論がないところが好ましい。
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