百冊018:シリコンバレー・フィーバー

この本は、私がシリコンバレーの成立を知るきっかけとなった本です。100年の歳月を経て、シリコンバレーという風土ができあがるまでの歴史は、とても興味深い。ただし、これはマイクロコンピュータとインターネットというテクノロジーによって、ワールドワイドに社会を変革する、今までにない歴史であって、真似して同じものを作ることができるとは思えません。次にバイオテクノロジーで同じような革命が起こると予測できます。難病の治癒やアンチエイジングといったことが、IT技術とバイオ技術の連携で可能になる。この革命の中心はどこか?また、シリコンバレーから広がるのでしょうか。

シリコンバレーは、スタンフォード夫妻が1891年に設立したスタンフォード大学に始まる。随分前に読んだ本でほとんど忘れてしまっていますが、記憶に残っているところを紹介しておこう。


1891  スタンフォード夫妻    スタンフォード大学を開設。資金2000万ドル(現在の価値で3000億円程度)、8000エーカー(山手線の内側の半分以上)のキャンパス。
1937  フレッド・ターマン     スタンフォード大工学部の教授就任。1900年パロアルト生まれ。
1939  ヒューレットとパッカード ターマンの教え子の二人がHP社設立
1951  フレッド・ターマン     インダストリアルパーク設立。
1955  ショックレー        ショックレー半導体研究所をパロアルトに設立。
1956  ロバート・ノイスら     ショックレー半導体研究所をやめ、フェアチャイルドセミコンダクター社設立。8人の裏切り者とショックレーから言われる。
1968  ロバートノイス      ゴードン・ムーアとインテル設立。
1971  フェデリコ・ファジン、嶋 最初のマイクロプロセッサー4004誕生。

この本は日本で1984年出版となっており、実は人に貸したまま返してもらっていない。したがって、上に記したようなシリコンバレーの起源だけでなく、アップルコンピュータの話がメインかもしれない。ただし、私がこの本の記憶として残っているのは、この100年前から現在に至る軌跡でしかない。シリコンバレーに知識労働者を集めてくるには、環境の整備された大学や工業団地が必要で、そこに起業する若者やそれを支援するインキュベータも必要だ。そして、ショックレーが戻ってくる。その中心がパロ・アルトというのはけっこう不思議。半導体、マイクロプロセッサー、パーソナルコンピュータと進化し続け、そして今はインターネットまで、この場所に起源を持つ。グーグルがスタンフォード大学のビル・ゲイツ記念館から始まったのも皮肉だ。

この本から得られることは多くない。そもそも真似しようがない。ある意味ただ感嘆するだけだ。しかし、知らないよりは、知っておいた方がいい。くれぐれも、日本にもシリコンバレーを作ろうなどと軽々しく言わないようにしよう。これは、シムシティではないけれど、大学を作り、工業団地を作り、様々な起業があり、100年かけて作られた土壌の上に成立している。このような精神風土は、人工的に作れるものではない。

最後にまとめると、様々な技術者が集まり、face to faceでの異業種コミュニケーションがあり、境界領域の中で、新しいものが生まれてくる、その典型的な場所がシリコンバレーだろう。

2007年03月04日 | Posted in 電脳:百冊 | タグ: No Comments » 

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