百冊019:ザ・サーチ グーグルが世界を変えた
1年半以上前に出版された本ですが、見逃していました。この本を先に読んでいたら、「グーグル誕生!」は百冊には入れなかったでしょう。それくらい、この本はお勧めです。
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この本がグーグルだけでなく、サーチ全般を対象としているところが優れていると思います。これと比較すると「グーグル誕生」は、記述が浅くてつまらない。さて、特に私がこの本で気に入ったところは、
①検索エンジン競争からいかにライバルを抜き去ったか
②Bill GrossとIdealabの存在、そしてOverture
③グーグルはエンジニアの会社
以上の三点が私にとってはインパクトがあった。
①90年代後半の検索エンジン競争。なかなか読み応えがあります。特にこの時期いろいろなものがでてきては消える。あの検索エンジンはどうなったのだろうということが多々ありました。特にアルタビスタが印象に残る。DECから生まれ、様々な変遷を経て、しかし今もあるんですねaltavista。このアルタビスタは、Webビジネスの教訓が詰まっています。ぜひ読んでいただきたい。つまらない営業担当やマーケティングマネージャー、プラニングマネージャー、そしてその技術のポテンシャルを理解できない経営陣、こういう人たちにアルタビスタは潰されたといっていいでしょう。グーグルはライバルを抜き去ったというよりは、ライバルが自滅していったのだと思います。
②Bill Grossを知らなかった。(これはいけない!)実際には知っていた。名前を知らなかっただけで、Lotusに彼がいたころ開発した「マゼラン」はよく覚えている。現在のデスクトップサーチそのものだ。そして、彼が作ったidealabもすごい。技術とマーケティングが一体となっているように見える(実情は知らないが。。。)そして、overture。結局adwordsはovertureの真似にすぎない。まだ覚えている。2003年ころインターネット広告を出すのに、overture(Yahoo)とGoogleにそれぞれ月30万くらい使っていた。そのころはまだ、overtureの方が呼び込む数は多かった。日本ではYahooが先行していたからだ。Bill Grossのような技術者がWeb時代に生き残っていくことは間違いない。
③この本で強く印象に残ったのは、グーグルはエンジニア主導の会社であることだ。この会社には、営業やマーケティング、プラニングの専門家は必要ない。なぜかと言えば、顧客を獲得するために、効果が不明な宣伝費やプロモーションをする必要はなく、それはマスメディアの報道や自分たちのサイトを通じて行うことが十分できるからである。訳のわからない営業費用なるものが必要ないからだ。彼らに必要なのは、新しいアイディアを現実のものにできるgeekであり、彼らにアフィリエートするbloggerだ。グーグルが目指すのは、産地直送であり、欲しい人に直接売る、自作自営のエンジニア集団だ。このあたりのアプローチは、Yahooと比較してみれば一目瞭然だろう。Yahooのサイトに行けば、鼻につくのは商売人というイメージ。これが私には拒否反応を起こす。その点グーグルも裏ではいろいろやっているとは思うが、ぶっきらぼうで売らんかなのイメージはない。
グーグルという会社の方向性が、この本を読んでいくらか理解できてきた。意図的に売り込もうとする人間への不信感。SEOというのは本当に小ざかしい。私が一番嫌いなものだ。実際に買った人が支持してくれることの積み重ねで信用を得ればいいではないですか。時間がかかる。当たり前です。信用を取るのに何年もかかるのは当たり前。それを厭うならばやらないほうがいい。
彼らが目指すものは、純粋なる知的好奇心を満足するもの、だと思う。その先に、たまたま買いたい人と売りたい人を結びつけるマーケットプレイスがある。検索エンジンというのは、究極には人を探して、人と人を結びつける仲介役だ。それに徹するものが支持される。
サーチは奥深いというか、人工知能そのものだ。
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