本>村上春樹のなかの中国
タイトルに惹かれて、読んでみました。村上春樹と中国の関係をなかなか思いつかない。少し考えて、「ねじまき鳥」の中でのノモンハンを思い出した。しかし、それ以外は思い出せない。完全にアメリカよりの作家というイメージがある。ジャズ、ピンボール、フィッツジェラルドなど。
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この本は、村上春樹と中国の関係、そして、台湾、香港、中国での村上春樹ブームが紹介されている。私が面白かったのは、村上春樹のなかの中国。「風」の中にでてくるジェイが中国人であることを、気がつかないか忘れていた。
そして魯迅を愛読しているとか、中国人の血が半分混じっている女性が出てくる「シドニーのグリーン・ストリート」、上海帰りの父がでてくる「トニー滝谷」。そして「中国行きのスロウ・ボート」。けっこうありました。
特に興味深いのは、「スロウ・ボート」。村上春樹が、初出誌版から単行本版、全作品版へと何度も改訂を行っている、その事実を知らなかった。詳細にその変更点を本書では調査している。細かい変更がわかると意外と楽しいし、こうやって何回も読み直しているだということを知った。
台湾、香港、中国での村上春樹ブームは、海賊版やら複数の翻訳やら中国人の受け取り方などそれなりに面白いが、途中で少し飽きてきた。しかし、やはり村上春樹はすごい。この人の小説は、国に関係なく読まれる。都市生活者という人種が存在するところには。私自身、「羊をめぐる冒険」「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」「ダンス・ダンス・ダンス」を1980年代に読んだとき、これはすごく現実に近い、今起こっている問題を小説で取り上げている、という感覚を持ったことを鮮明に覚えている。
村上春樹が好きな人には、今までにない村上春樹が見えて、面白いと思います。私も、「中国行きのスロウ・ボート」を読み直してみたいと思いました。
村上春樹
[本]『村上春樹のなかの中国』(藤井省三)[B1237]「村上春樹のなかの中国」と「中国のなかの村上春樹」について論じた本。「村上春樹のなかの中国」は村上…