本:生涯最高の失敗
生涯最高の失敗 田中 耕一 発売日 2003/09/09 |
お奨め度:★★★★★ ★★★★(9)
中村修二さんの本を読んだ後、同じ朝日選書に田中耕一さんの本があることを知りました。すぐに借りてきて読んだのですが、中村さんと共通点があって面白い。
①二人とも実験が好きである。
②自分で作ったものを営業までしたことがある。
③発見したことの原理が未だ解明されていない。
キャラクタは全く正反対のように思えます。田中さんは生涯一エンジニアとして企業内に留まるでしょう。一方中村さんは、一エンジニアからベンチャービジネスの世界に足を踏み込んでいる。きっと発見したことのビジネス性の違いによるところが大きいのでしょう。田中さんの発見は、研究所などが購入する測定装置に応用されるもので、一方中村さんの発見は、照明という非常に汎用性のある分野へ適用できるもので、代替可能な既存の市場規模が見えているものです。この差が、その後のアプローチの違いを際立たせています。
この本を読んで、田中さんが発見したことがよく理解できました。やはり、これは偶然の発見ではありません。あの実験結果から巨大分子の質量測定が可能であることに誰が気付くでしょうか。未だにその原理が解明されていないことを考えると、偶然にこの現象に遭遇する人はいても、方法論として提示することはできなかったでしょう。
利根川さんと立花隆が対談してできた「精神と物質」を読んだ時に思ったのは、これが解明されれば大発見ということを知っている人は、それぞれの分野においてほんの少数しかいないということです。ほとんどの人は、問題そのものの存在を理解していないからです。たとえその問題が理解できても、その解明のインパクトがどれだけ大きいか優先順位をつけられないと、つまらない問題を選んでしまうこともあると思います。その辺の問題の重要性、将来性が考えられる研究者がすばらしいと思います。
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