本>私の男 桜庭一樹著
桜庭一樹という作家が気になっていた。「赤朽葉家の伝説」が「このミス」で2008年版国内2位ということもあり、遅ればせながら読むつもりだった。しかし、本屋で「赤朽葉」と一緒に最新作「私の男」というのを手にとって、急に気が変わり、こちらを読むことにした。
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一気に読ませる力はあるが、あまり良い読後感ではない。これは万人向けではなく、一部読書通の人にしか受けないように思う。私のような平凡な人間からすると、異常で不気味で、どうしようもない感覚に襲われるが、おぞましいもの見たさで最後まで読んでしまった。
このブログでは、お勧めするものしか書かないことにしているので、ちょっとポリシーから外れていますが、それもこの小説が持っている力かもしれません。
話は、娘「腐野 花」とその養父「腐野 淳悟」の関係を、現在から過去に戻りながら、明らかにする。「腐野」という苗字がなんとも不気味。24歳の娘が結婚するところから、9歳の時の津波で家族を失うところまで遡る。9歳の娘を引き取る25歳の男というのが、かなり異常な設定です。読んでいて、暗い話ですが、読むのを途中でやめたくなる暗さではなく、引き込まれるような妖しい暗さです。
普通の人は、読まない方がいいと思います。妖しいものに惹かれる人だけにお勧めです。
2008年版「このミス」では、24位にこの本がランクされていますが、これはミステリではないと私は思います。
「週間ブックレビュー」というTV番組で、桜庭一樹本人を見たことがありますが、小柄で本当に普通の女性という印象があったので、こんな本を書く人だとは想像できなかった。読み終わった後も、本当にあの人が書いたのだろうか、と思い続けている。
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