脳>私の仕事の出発点
本棚を整理していたら、20年以上前の思い出の品物が出てきました。
これは、私が設計したゲートアレイです。型番MB62H701です。ソフトウェア技術者として出発したつもりでしたが、最初にてがけたのはマイクロコンピュータを使った制御回路とソフトウェアの設計でした。マイクロコンピュータのハードウェア、ソフトウェアを独学で習得し、さらにチップの設計までに手を出したのです。簡単に言えばデジタルシステムの何でも屋です。
このチップができた経緯は、TV画面を印刷するという機能を開発した時に、製品化するために回路をコンパクトにする必要があったからです。最初に開発した時は、畳の半畳分くらいの大きさに、ワイヤラッピングで作りました。この回路を製品にするために、5センチ角くらいのボードにすべてを詰め込む必要がありました。ゲートアレイ設計用の端末を使って、回路を入力し、大型計算機によるシミュレーションを行って、信号の遅れがあっても、タイミングがずれないことを確認し、発注をしました。
このチップは、A/Dコンバータによってビデオ信号を4ビットのデジタル情報に変換したものを受けとり、それをリアルタイムでダイナミックRAMに書き込む機能と、ダイナミックRAMの情報を維持するためのリフレッシュ信号を一定期間ごとに発生させる機能を持っていました。最初のダイナミックRAMというのは、リフレッシュ機能を自分で持っていなかったのです。
このチップを設計したときに、デジタルの世界というのは、論理的に考える能力さえあれば、どんなことでも達成できるという自信ができたのです。私のように、デジタル回路のハード設計、アセンブラによるプログラミング、チップの設計、高級言語によるプログラミング、Webのデザイン、サービスの設計、そしてサービスのビジネスモデル、までに関わってきた人間というのは、珍しいと思います。
このチップが私の青春の思い出です。このチップを設計してきちんと動作した時が、私が技術者として世の中を渡っていけると確信した瞬間だったからです。どんなことでも、論理的に解決できるという、根拠のない自信が、このとき生まれたのです。ただし、この自信はあくまでも、デジタルの世界の話であって、人間社会は論理的に解決できることはほとんどありません。そこではほとんど、論理が通用しないからです。そういう意味では、世の中を渡っていくというのは、本当に難しいですね。
コメントを残す