本>ドット・コム・ラヴァーズ
私が考えるインターネットの最大の効用は、個人と個人を結びつける手段を提供していることである。メールやソーシャルネットワークは、リアルな交友関係を補完してくれる。さらに重要なことは、リアルでは絶対に出会うことのない人たちをヴァーチャルにマッチメークすることである。私自身1980年代後半にパソコン通信をしていたころ、オフラインミーティングに参加して感じたのは、パソコン通信がなかったらこの人たちに出会うことはなかっただろうということである。
出会い系サイトといっても、様々なバリエーションがある。ソーシャルネットワークは、リアルとヴァーチャルが混在した、ある程度信頼できる出会い系サイトとみることもできるだろう。
本書「ドット・コム・ラヴァーズ」は、出会い系サイトの中でもオンライン・デーティングというカテゴリーにくくられるmatch.comでの実体験レポートである。
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match.comは、2006年全世界で約3億ドルの売上げがある。売上規模はそれほど大きくないと感じるかもしれないが、インターネットサービス業というのは、サーバー維持費と人件費のような固定費を払ってしまうとほとんどが粗利なので、かなり儲かっているはず。ビジネスとして、様々な人を結びつけるサービスは今後も急成長していくだろう。
本書は、大学教授である著者がサバティカルでニューヨークに1年間滞在した時の冒険譚である。非常にプライヴェートなことを人前にさらけだしている感じもするが、著者の知性によって、ニューヨークやハワイの普段の生活や文化の紹介として面白く読める。
私が本書の中で興味を持ったのは、chemistryという言葉である。日本に男性二人のchemistryというグループがあるが、なぜ化学反応なのかと不思議に思っていた。ネーミングの由来は、音楽的な化学反応を引き起こすというような期待が込められていたようだ。男女の間でchemistryというと日本語で相性に近いようだが、化学反応という言葉から二つが合わさって別のものに変わるという方がイメージとしてわかる。なかなかいい言葉だ。日本でも、「彼女と化学反応を起こしたんだ。」という使い方はできるように思うが、どうだろうか。
オンライン・デーティングというのは、相性のいい人間を見つけてマッチングする仕組みなわけだが、西洋的な還元主義的なアプローチで、個別の要素で共通点が多いという検索結果を信じるのは意味がないように思う。もし、本当のマッチメークの仕組みを作るのならば、chemistryを検索できなければならないだろう。これがもしできたら、トンデモナイビジネスになりそうだ。
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