ミステリ:幽霊刑事
幽霊刑事(デカ) 有栖川 有栖 講談社 2003-07 |
お薦め度:★★★★★ ★★★★(8)
最近めっきりミステリを読む機会が少ないが、有栖川有栖が時々読みたくなる。
今までに、「孤島パズル」を読んだが、文体の明るさと論理へのこだわりが気に入っている。クイーンの好きな私には相性が良さそうだ。しかも国名シリーズがあるではないか。「マレー鉄道の謎」を読む前に、旧作を読もうと「幽霊刑事」を読み始めた。期待していなかったが、一気に読める。「ゴースト~ニューヨークの幻」という映画の本歌取りのような設定だが、軽く明るい文体が最後の悲しさを強調している。小説だから深刻なことをコミカルに語れるという部分もあるが、現実でも本当に悲惨な状況で傍からみると滑稽に見えることは多くある。トリックも殺人の動機も、なぜか納得はできない。しかし、この設定は最後まで読ませる装置として確かに作動しているようだ。媒介する人間のキャラクタがけっこう重要なのだが、これは映画と同じく、この小説でもうまく機能している。こういう作品を一気に読ませる力が、作家としては重要に思えてくる。これで、「マレー鉄道の謎」も「双頭の悪魔」も期待できそうだ。
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