本:カリスマ
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コンピュータの百冊に入れようと思って読み始めたが、それほどの内容ではなかった。しかし、オラクルの成り立ちとラリー・エリソンという人物を知る上で、なかなか貴重な本だ。
最初に奇妙な符号として感じたのは、マイクロソフト、アップルなどの創立者との類似だ。ラリー・エリソンとボブ・マイナーの関係は、アップルのジョブスとウォズやマイクロソフトのビル・ゲイツとポール・アレンを思い起こさせる。ビジョンを作る人と技術を作る人である。そして表舞台に立つのはもちろん前者だ。ビジョンを作る人間は、道具として技術を使う。次々と新しい技術に飛びつき、それをビジネスとして形にする。したがって、最初に組んだ技術者は過去のものとして忘れ去られる。まったく同じ経過をたどっている。良し悪しではないが、やはり技術に閉じこもっているだけではなく、もう少し余裕をもって社会全体を見る目が必要だと思う。このコンピュータ業界という世界でみても、技術だけでなく、ビジネスとしての側面も見ているビジョナリストが彼らなのだろう。どうもビジネスに走っていると思われがちな3人(2人?)だが、彼らが考えているのは金になるかではない。未来はどうなるかだ。あるいは未来はこうしたいという意志だ。それがビジネスをたまたま産み出しているにすぎない。
本書では、オラクルの生い立ち、RDBビジネスの急成長、ずさんな経営、エリソンの私生活、ネットワークコンピュータなどが書かれている。個人的興味としては、「なぜエリソンは日本好みなのか」「日本オラクルの貢献度は」などがわからず、ちょっと残念だ。訴訟のことより、もっと書くことがあると思うのだが。
アムダール時代に日本を訪れたようだが、オラクル設立までの経歴の方がもう少し知りたかった。
前に紹介した「日本オラクル伝」の方が競合との関係が詳細に記述されていた。この本もエリソンの私生活ではなく、オラクルが如何にして競合を退けたのかに焦点を合わせていたら、もっと興味深い本になっただろう。
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