百冊027:クロード・シャノン 情報時代を発明した男
ジミー・ソニ著「創始者たち」(2021)を読んで、開発現場に実際にいるような描写が素晴らしく、著者に興味を持ちました。それで、著者ジミー・ソニの過去の著作を調べたところ、この本「クロード・シャノン 情報時代を発明した男」(2017)を見つけました。ジミーソニは、元ハフィントンポストの編集長で、この本が2作目でした。
問題を解決する能力(1916-1937)
クロード・シャノンは、電気工学者、数学者と紹介されていますが、私がイメージしている数学者とはかなり違った印象を受けます。私がイメージする数学者は、抽象的な概念を取り扱い、思考にのめり込み、現実の問題には無関心な人だと思っていました。
少なくとも、シャノンはそのようなイメージからかけ離れています。彼は、子どもの頃機械いじりが好きで、模型、ラジコン、電信システムを作ることを趣味にしています。
だから、MITに進学する時も、数学科ではなく、ヴァネヴァー・ブッシュのいる電気工学科を選んでいます。そこで、ヴァネヴァー・ブッシュの下で、微分解析機を使って計算する際の助手をしていました。その後、ベル研でリレーを研究する機会を得て、ブール代数とスイッチング回路の関係を分析し、2進数で計算機の回路が設計できることを考えつきます。
この時の経験から、「リレーとスイッチング回路の記号分析」(1937)を若干21歳で書き上げています。そこには、抽象的な概念に遊ぶような傾向は、まるでありません。眼の前の問題を解決することに全力を注ぐ、シャノンは数学者というより、数学を利用する電気工学者だと思います。
ベル研(1940-1955) MIT(1956-1978)
シャノンは、1940年夏にベル研に行きます。それから、プリンストン大学に1年間在籍した後、ベル研に戻り、数学研究部門の常勤専門職員となっています。そこで、ベル研に数値解析者として勤務していたメアリー・エリザベス(ベティ)・ムーアと出会い、1949年に結婚しています。お互いに研究者であったことが、円満な家庭生活につながったように感じます。シャノンが、安定して業績を残せたのには、ベティの力が大きかったと推測できます。
本書が面白いと感じたのは、ここまでです。
晩年の趣味的活動は、それほど面白いとは感じませんでした。
本書の前半がとても面白く、シャノンの業績を一般人にもわかるように説明してくれたことが、本書の最大のポイントです。2020年代に生きる私たちは、デジタルを享受していますが、その始まりを知ることは、とても大切なことだと思いました。
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