起業のさまざま
すごい起業 絶頂と奈落のベンチャー企業「ガズーバ」 大橋 禅太郎 ランダムハウス講談社 2005-12-23 |
週末起業 藤井 孝一 筑摩書房 2003-08-06 |
成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語 神田 昌典 講談社 2004-01-27 |
起業に関連した本を三冊取り上げました。大雑把に起業の仕方を分類すると①ベンチャーキャピタルから資金を調達して立ち上げる、②自分で少しずつ初めて大きくする、に分けてもいいかと思います。前者の事例として「すごい起業」、後者の事例として「週末起業」が当てはまります。起業というのは、さまざまな形態がありますが、「すごい起業」のシリコンバレー型集中と「週末起業」のSOHO的分散はその両極端でしょう。私が思うには、起業というと前者を思い浮かべる人が多いと思いますが、インターネットによる今後の起業というのは、ほとんど後者、そして後者の連携によって生み出されると予測しています。
それぞれの本についてまず紹介したいと思います。
「すごい起業」は、著者が2000年8月に出した「ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記 」の焼き直しで、最後に前著出版後の経過を追記して、今回再出版したものです。5年経っているので新鮮さはありませんが、シリコンバレーでのベンチャーの立ち上げの様子が良くわかります。この本の貴重なところは、失敗事例だということです。今まで私が読んだものは、ほとんど成功事例です。ヒューレットパッカード、アップル、オラクルなど、淘汰されて残った企業の話です。これは、違うところが貴重で、ITバブルの絶頂期に書かれた貴重な記録です。ここでのベンチャーはお祭り騒ぎに近いものです。しかし、祭りの後はさびしいもので、 ガズーバのような最後です。確かに淘汰されてどれかが残るわけで、挑戦すべき時は必要だとは思います。楽しい思い出として残ったり、これをネタにして次の仕事をするということで、著者には良い経験だったかもしれませんが、このガズーバという会社が何か価値を生み出していたのかという観点から見ると、とても疑問です。楽しいことを考えて、お金を集めてイベントをやって、でも終わった後に残るのは虚しさだけではないでしょうか。インターネットで立ち上げ易いのが、こういった広告ビジネス関連で、他の企業からお金をもらうスタイルのものです。でも、これで成功するのはほんのわずかで、その数社がおいしいところをねこそぎ持って行きます。
「週末起業」は、改めて紹介するものでもありませんが、「すごい起業」の対極にあるものです。自然発生的にビジネスをリスクなく始め、もしそれなりに収入がついてくれば、独立する。その基本は、楽しいから続けられるということ、リスクがなく始められること、です。しかし、案外見過ごされているのが、売るものを持っているかということです。ずっとサラリーマンで過ごしてきてしまった人間には、組織の中で分担して物事を進めることはできます。機能の一部だけしかスキルを持っていません。モノでもスキルでも個人で完結して提供できるものがないと、この起業は成立しません。
「成功者の告白」は、起業した後どうやって大きくしていくか、そしてそこで発生する問題を物語にして書いたものです。すごくポイントを押さえていて、現実にありそうな内容です。
私がこの三冊を読んで感じたのは、やはり今後は週末起業的なスタイルがどんどん増えるだろうということです。また、その方法を支援するインターネットサービスがどんどん出てくるでしょう。そして、週末起業家の横連携によって、よりビジネスが広がっていくように思います。ベンチャーは、一部の画期的な技術を持った特殊な事例だと思います。一般の人には地道な週末起業家が良いと思いますが、問題はオンリーワンで提供できるものを持っているかです。意外にそれを見つけるのが大変なんです。
コメントを残す